東京高等裁判所 平成元年(行ケ)116号 判決
一 請求の原因一(特許庁における手続の経緯、本願商標の構成及び指定商品等)、二(審決の理由の要点)は当事者間に争いがなく、引用商標の構成及び指定商品等、引用商標が「プロ」との称呼を生じること及び本願商標と引用商標の指定商品が同一であることも当事者間に争いがない。
二 そこで、原告主張の取消事由について判断する。
1 本願商標の構成を示すものであることについて当事者間に争いのない別紙(一)によれば、本願商標は、やや図案化した「P」の文字と「romark」の文字とを一連に「Promark」と書した英文字七文字からなり、そのうち、冒頭の「P」を大文字として、その余の文字に比較して大きく書し、その余の「romark」の六文字を小文字として同じ大きさで書し、全文字をほぼ等間隔かつ一連に書してなる、比較的簡明な構成であることが認められる。そして、「Promark」なる語が、特定の語義を有するものとして一般に親しまれた既成語を表したものでない造語であることも当事者間に争いがない。
そうすると、本願商標は、外観上一連一体に表示されたまとまりのある簡明な構成態様のものとして観察される、特定の語義、観念を有さない造語であつて、しかも、これを一連に称呼しても冗長にはならず、「プロマーク」と無理なく、一連かつ極めて語調良く称呼し得るから、原告主張のとおり、全体として不可分一体のものと認められる。
2 ところで、被告が主張するように「mark」の文字が「商標」を意味するものとして使用されることがあることは日常生活の経験に照らしても肯認し得るとしても、本願商標を構成するその余の文字部分である「Pro」の文字は、「専門の」ないし「専門家」という程度の個性のない普遍的な意味を有するものにすぎず、格別に高い識別標識としての機能を有するものとは認めがたく、「Pro」と「mark」との二つの語の間に識別標識の点において格別の軽重があるということもできないし、また、成立に争いのない甲第四号証の一ないし一一によつて認められるように、本願商標と指定商品を同じくして「PRO」とその余の文字部分を結合した商標が多数登録されていることに照らせば、「PRO」の部分のみを捉えて取引に当たるとすれば、かえつて商品を識別し得なくなるおそれも十分にあり得るものといわなければならない。のみならず、本願商標は、前記のとおり、全体として簡明な構成からなり、「プロマーク」と極めて語調良く称呼されるものであることに徴すれば、本願商標が「PRO」の文字部分のみで称呼されるとの被告の主張は採用の限りでない。
3 また、他に、本願商標を、殊更、前半部の「Pro」の部分のみを抽出して称呼しなければならない事情があると認めるに足りる証拠もないから、いかに簡易迅速を尊ぶ取引の場にあつても、本願商標に係る指定商品の取引に当たつて一般需要者もしくは取引者が、本願商標を「Pro」のみで称呼するとは考えられない。したがつて、本願商標からは「Pro」との称呼をも生じ得るとする審決の認定判断は誤りであるといわざるを得ない。
4 そうである以上、本願商標の「プロマーク」との称呼と引用商標の「プロ」との称呼(引用例が右称呼を生ずるものであることは、前記のとおり当事者間に争いがない。)とが、語韻語調を著しく異にし、聴者をして出所の誤認混同を生ぜしめ得ないものであることは明らかであるから、本願商標が引用商標と称呼を共通にする類似の商標であるとの審決の認定判断は誤りである。
5 そして、右審決の誤りが審決の結論に影響を及ぼすことも明らかであるから、審決は違法として取り消されるべきである。
三 よつて、原告の本訴請求を認容する。
〔編注1〕本件における特許庁における手続の経緯及び審決の理由の要点は左のとおりである。
一 原告は、昭和四八年一二月一五日、構成を別紙(一)のとおりとし、指定商品を第一七類「スポーツシヤツその他本類に属する商品」として商標登録出願(昭和四八年商標登録願第一九五九四五号、以下、右登録出願に係る商標を「本願商標」という。)をしたが、昭和五八年二月二二日拒絶査定を受けたので、同年五月六日審判を請求した。特許庁は、右請求を同年審判第九八三三号事件として審理をしたうえ、平成元年三月三〇日、審判請求不成立の審決をした。
二 審決の理由の要点
1 本願商標の構成、指定商品及び商標登録出願日は前項記載のとおりである。
2 これに対し、原査定引用に係る登録第七二九四〇六号商標(昭和四二年一月一二日設定登録、昭和五二年八月三日、昭和六二年四月一七日各存続期間の更新登録、以下「引用商標」という。)は、別紙(二)のとおり、「PRO」の英文字と「プロ」の片仮名文字を二段に横書きしてなり、指定商品を第一七類「被服、布製身回品、寝具類」とするものである。
3 審決の判断
(一) 本願商標は、やや図案化した「P」の文字と「romark」を、一連に「Promark」と書してなるものであつて、その後半部の「mark」の文字は「印」を意味する語として理解されるにすぎず、本願商標において自他商品の識別標識としての機能を果たし得る部分は、前半部の「Pro」の文字にあるものというべきであるから、該文字に相応して「プロマーク」の称呼を生ずるとしても、「プロ」との称呼をも生じ得るものである。
(二) 他方、引用商標は、「Pro」「プロ」の文字よりなるから、該文字に相応して「プロ」との称呼を生ずる。
(三) そうであれば、本願商標は、「プロ」との称呼を共通にする点で引用商標と類似の商標であり、かつ、指定商品も同一であるから、商標法四条一項一一号の規定により登録することができない。
〔編注2〕本件における別紙は左のとおりである。
別紙
(一) 本願商標
<省略>
(二) 引用商標
<省略>